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広島家庭裁判所 昭和32年(家イ)337号 審判

申立人 関根トシ(仮名)

相手方 関根利助(仮名)

主文

申立人と相手方とを離婚する。

理由

申立人は主文同旨の調停を求め、申立の実情として、申立人は相手方と大正四年○月○○日婚姻したのであるが、相手方が家庭を顧みないので、昭和三年頃より別居して実質上の夫婦関係を絶ち、爾来約三〇年間音信なく別居生活を営み今日に至つたもので、今更相手方と正常な婚姻関係に復する意思がないので、本調停を求める旨申述べ、これに対し、相手方は申立人主張の事実につき争いなく、且、婚姻継続の意思を有しないのであるが、別居の経緯につき相手方の立場を支持し好意を示した部落の講中に対する義理合上、自己の意思とし離婚に同意することができないから、調停に応ずることができぬ旨申述べ、調停委員会の勧告に応じないため、調停の成立に至らなかつたものである。

そこで考えて見るに、当事者双方の夫婦関係は既に所謂外縁関係にあつて、双方共に実質上婚姻を継続する意思のないことが明らかであり、且、離婚に応ずることが世間に対する義理を欠くという相手方の主張は、婚姻関係の本旨に反する見解と考えられ、か様な理由で徒らに外縁関係を持続することは、当事者に何等の実益なく、且、法秩序を紊すものと思料せられるので、当裁判所は必要な事実を調査し、家事審判法第二四条第一項の規定により主文の通り審判する。

(家事審判官 藤井英昭)

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